太極拳の伝承について
数百年の歴史の中、陳家の弟子たち、或いはその弟子の弟子たちの努力により、楊、武、呉、孫、などの流派も現れました。 各流派の諸先輩方、普及活動を行った愛好者たちの偉大な努力のおかげで、今日の太極拳の盛況になりました。
1949年10月、中華人民共和国が成立しました。
1956年、中国政府は24式簡化太極拳という大衆化標準化太極拳を作りました。
これは陳家の弟子である楊家の太極拳をベースに作成されたものであり、体育大会の試合種目にもなっています。
その後、試合大会で審判しやすいように開発された競技用形を「制定拳」と呼びます。これらの「制定拳」は、皆さんがテレビや映画でよく見る太極拳だと思います。また、日中国交正常化の時、中国政府が作成した「24式簡化」が日本に紹介されたため、現在日本で一番普及しているのは本来の伝統太極拳ではなく、24式簡化です。
制定拳は外観動作と要領基準が標準化、モデル化、デジタル化され、演技の秒数をも厳しく要求され、高得点を得ることが重要な目標となります。これゆえ、文化思想、体内運動、意識と気、そして武功などの修練は審判対象になっていません。
制定拳は、太極拳の構成要素のうち外観動作のみを強調することが明らかです。構成内容、創出論理と創出目的、そして発展方向を見ると、制定拳はすでに太極拳の軌道から離れた方向を進んでいます。オリンピックの試合種目になれば大変嬉しいことですが、混乱のないように名称上の工夫と概念上の区別を薦めたいです。
太極拳は文化的背景があり、強い武術技と養生術を目的として、自由性や人格と個性を尊重しながら数百年の歳月を経て発展、進化・合理化されてきたものです。もし、革命的にスポーツ化された制定拳が太極拳を代表して一般大衆に普及するのであれば、不具合や健康効果、バージョンアップ、自由性や人格と個性の尊重などの課題について調査研究することが必要であると思います。貴方は何のために、誰のため、どの種類の「拳」を練習していますか ?
四正太極拳の紹介
伝統太極拳は複雑であり、普及することは困難です。伝統を守り、伝統を現代社会に貢献することと同時に、その動作が簡単で普及し易い太極拳がないでしょうか。そこで、陳沛山は家伝の技及び理論、20年以上の太極拳教授経験を基に、現代生活に応じる鍛錬方法として「四正太極拳」を創出しました。
現代社会の人々の多くは長時間座ったまま、あるいは立ったままで作業することで、腰、肩、目の疲れを感じやすく、肥満や自律神経の失調なども多く、精神的にも様々なストレスを受けています。これら現代生活の課題に対応して、動作を編成したのが「四正太極拳」です。例えば、頭、首、目、胸、肩、腰の大円運動、高低差の足運動、片足で立つなど豊富な動作を取り入れてあります。中でも、心より天と地に向けて伸びやかな展開動作は特に気持ちよく、心身をリラックスさせることができます。
四正太極拳の最大の特徴は内部動作にあります。動きは手足より直接に作り出されるのではなく、臍の下にある丹田から始発し、腰や股関節、腎臓や肝臓、腸、肺、そして肩など身体内部を通して手足へ流れていきます。特殊な内臓運動と腹式呼吸により、消化促進、血液循環、体脂肪の消費に有効であり、旺盛な精力を保つことも期待できます。激しい運動ではないが、内部運動により体の内部から気持ちよく全身を暖めて汗を流します。
四正太極拳は美しい外部動作だけではなく身体内部の動きを強調し、美容、健康、そして武術の基本鍛錬の目的を達成できます。
斜めを向く動作が少なく、四つの正方向に向けて動作を展開し、一つの動作が完成したところから次の動作へと自然に流れやすく覚えやすい編成になっています。伝統太極拳の複雑多様な動作から四種類の手法を抽出して基本手法としています。
また、人体の重要な四種類の経絡(手足の太陰と太陽経)を練習に用いて、体内の陰陽バランスを調整することができます。特に大脳の記憶力、神経反射の練習のため、意、気、形、景、情、志、神、内視などの古来の鍛錬方法を取り入れています。
覚えやすく、練習しやすく、何時でも何処でも、狭いスペース、短い時間でも美しい動作で体を癒し開放することができるうえ、淵源である古来太極拳の文化を含み、四正太極拳は一生の宝とも励みともすることができます。